ケッタイで愛すべき奇習

 王権神授説ではないけれど、我が国の天皇は官位をいろんな所にばら撒いている。
これは腹を抱えるほど可笑しい風習ではあるけど、他面、なんとも神妙なる行為とも思える。
 いくつかの例を出す。
 稲荷神社には正一位を授けている。お稲荷さんの赤い旗指に「正一位稲荷大明神」といのは至る所で見られる光景であろう。
 稲荷と犬の糞と江戸っ子はそのコモディティを表現していたが、そんなありふれたものに正一位なのだ。

 それはそれとして、活火山に官位を授けるのは、なんともいやはや図抜けた発想だと思う。
 阿蘇山は、かつての大噴火のみぎりに官位を進められた。阿蘇の神さま、建磐龍命(たけいはたつのみこと)は正二位勳五等になり、その奥様の阿蘇津妃命(あそつひめのみこと)は正四位下になったようだ。

 今度、富士山が大噴火したらば、官位を授けるだろうか?
 個人的な願いとしては、是非とも官位を授けてほしいものだ。この奇習でもって、以下に日本人が自然界に畏怖を抱きながらも、科学技術を超越した脅威に対して、理解を絶する方法で宥めすかすかを世界に示すことが重要だろう。
 合理的な思考のみで世界が割り切れるなどというのは、人の僭越というものなのだ。