岩波文庫『中井正一評論集』の長田弘のあとがきの締めくくりが見事だ。
1952年没。死は早すぎたが、言うべきことを、中井正一はすべて言っていて、その人生は未完の印象を残さない。
最後の京都学派の一人である中井正一は50代半ばで逝った。戦前は治安維持法で検挙された哲学者も戦後は、図書館を国民のための図書館とすべく、国のために働いだ。巨大な組織との軋轢で苦しんだ結果の過労死といえる。
ちなみに、彼の長男、中井浩も物理学者としてスタートし、調査機関に関わる同じような仕事につき、似たような年齢でガンでなくなっているのは興味深い。
いずれにせよ、彼のようにスポーツ、美学、調査機関、委員会と図書館を19世紀の哲学の論理で噛み砕いてみせた思想家は、もう二度と現れないであろう。
激動の時代を一直線に疾走した人物に遅ればせながら、哀悼の意を表する。
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