「エスキモーハンター」記録映画 1949年

 イヌイットの生活を今に伝える貴重なる記録映像。カナダの北極海沿岸の一家を描く。イグルーで伝統的な生活に「近い」暮らしぶりをとある一家がみせてくれる。父親の狩りのうでは半端じゃない。アザラシ、海鳥、カリブーを次々に仕留める。
海水に少しでも触れないようにしているのがわかる。体温を奪う水温だからだ。
一家団欒の食事が目を引く。なまの魚を丸かじりしているのだ。嬉しそうにかぶりついている。
父母と娘二人。この一家は日本人の家族といっても通用する。

 文明の利器による便利さを手に入れて間もない。崩壊が始まる直前の、まだ、健全な時期の民族の記録だ。
 それまでの弓矢と槍の狩猟にくらべ、ライフルは狩りの効率を格段にあげた。ケモノたちはいとも簡単にイヌイットの餌食になる。それをもとに製作した手芸品でアメリカ文明の商品と交換するのが、映像ででてくる。
 それは、野生動物の激減や伝統生活の瓦解といったことを招き寄せるであろう。

 興味深くも、このフィルムが映された時期が本多勝一がカナダ・エスキモーを著した時期に重なる。

カナダ=エスキモー (朝日文庫)

カナダ=エスキモー (朝日文庫)