ガイアナ人民教団事件とフィリップ・K・ディック

 ガイアナ人民教団の集団自決事件は世の中に衝撃を与えた。1979年の事件だ。ジェームズ・ジョーンズキリスト教の牧師で、一頃はキリスト教の代表的牧師として大統領府に招かれたこともある。
それがアメリカ社会に絶望して、ガイアナに集団入植する。そのユートピアの名は「ジョーンズタウン」だ。そこで「地上の楽園」を建設しようとする。
 彼の最後のスピーチでいう。ジョーンズはがんに罹っており、数々の訴訟にまみれており、査察にきた上院議員を射殺していた。
「この世界は我らのホームではなかった」
そう捨て台詞を残して無辜の信者を巻き添えにして地表を去るわけだ。



 SF作家とは、フィリップ・K・ディックである。そしてここで言及したい作品は『ジョーンズが作った世界』になるのは当然だろう。
 あらすじはこのブログにある→http://www.inawara.com/SF/H294.html
おもて向き、ストーリーはジム・ジョーンズの「終末論的幻想」には関係なさげだ。にも係わらず、ジョーンズの妄想が人びとを幻惑し、暴走してゆくプロセスは妄想に取り込まれた人びとの無力感をまじえながら、ディックワールドと類似した構造だと感じるのだ。
つまりは、ディックは集団妄想の自壊性を予測していたと深読みしたのであります。

ジョーンズの世界 (創元SF文庫)

ジョーンズの世界 (創元SF文庫)