A.E.コッパード

 何よりもこの人は『消えちゃった』(平井呈一訳)で鮮烈なイメージを残した作家である。イギリスの数あるマイナー作家の一人である。だが、その独特な味わいゆえに固有なファンも多いだろう。
 それは、思い出したように短篇集が刊行されることでも証明されよう。

 『銀色のサーカス』はトラの着ぐるみの筋肉男が妻を奪ったライオンの着ぐるみ男とサーカスで対決する。『消えちゃった』は旅行中のグループが順繰りに姿を消すだけの他愛のない話が奇妙な読後感を残す。
 それは『郵便局と蛇』でも同様なこと。『シンプル・サイモン』は現代的なお伽話。

 荒俣宏が盛んに紹介・翻訳を続けたこともその作風が分かろう。

 サキとか、デ・ラ・メアとか、もしかしてブウコフスキが好きなら、この人の短編が気に入ると思うのだ。

 

郵便局と蛇 (魔法の本棚)

郵便局と蛇 (魔法の本棚)

 
天来の美酒/消えちゃった (光文社古典新訳文庫)

天来の美酒/消えちゃった (光文社古典新訳文庫)