シンボルとしてのコンパス

 分度器、コンパス、三角定規は中学の技術家庭科の三種の神器だっちゃ。ところで、中国神話では女媧(じょか)がコンパスを持っている。人の創造者で蛇身の女神が何故かコンパスを手放さないのが、なんとなく気にかかる。
 コンパスをシンボルとする理由としては「治水神」。共工の失敗した洪水対策を女禍が堤防により食い止めたという説話が思い浮かぶ。パートナーの伏羲(フクギ)は角定規を持っている。
 古代中国では測量による土木工学を重んじていた証拠であろう。カール・ウィットフォーゲルは中国の統治のあり方を大規模な河川事業=治水工事をベースとした水力社会と呼んだ。戦国時代になって治水対策が始まった日本の国家統治方式とは大きく異なるのだ。
 また、洪水後の区画整理幾何学的に管理していたエジプト文明と対照的だ。
 興味深いことに、ヨーロッパ近世に出現した「秘密結社」フリーメーソンも同じ様なペア、すなわちコンパスと角定規をシンボルとしている。

 手元のシンボル事典によれば、

 コンパスと直角定規は錬金術の<両性具有者>の男女両半分のそれぞれに割り当てられる

 

 西洋社会で円と直線で両性を象徴するなんてのは中国からその象徴言語が西洋に伝来したのだろう。フリーメーソンにまで影響がしのびこんだのだ。それくらい、この神々のシンボルはインパクトがあったのだ。

世界シンボル大事典

世界シンボル大事典

支那社会の科学的研究 (1982年) (岩波新書 特装版)

支那社会の科学的研究 (1982年) (岩波新書 特装版)