自治体首長が国政に物申す事態になっている。
その直接の原因は中央政府の指導力と政治力の劣化にあることは、ほぼ間違いない。
小泉政権以降の首相の不甲斐なさは連敗記録を更新した。
その間に一部の自治体は国にNOを突きつける習性を身に着けてしまう。沖縄県がその先鞭をつけたといえよう。基地問題で譲らぬ構えで政府をたじろがせた。
その流れに大阪府も名古屋市も合流した。実効性のある政策を打ち出せない国に対するアンチテーゼの施策で地域住民の支持を得たのだ。
ダメ押しで起きた大震災後の原発対応の紆余曲折で、それまで大人しかった福島県や福井県などの自治体も堂々と反対意見を表明するようになる。どこかの都知事は国境の離島を買い上げるとまで宣言し、外交に口出しをしだした。
ありゃりゃである。
こんな事態になったのは中央の政党と官僚の迷走の結果ではあるが、これを下克上といわずして何というべきか。
地域住民にとっては当然の発言ともとれるであろうが、一国民としては何にも決められない何も実行できない一国の政府が望ましいとはいえない。
国は政治的権力の頂点にあり、自治体はその下に組み込まれている。両者とも民意を受けて動いているのは共通であり、なにも自治体が上位にあるわけではない。であるのい、自治体の抗議に左右されてばかりでは中央の権威は地に落ちた感がある。
政府なぞ看板ばかりとぞなりにける、というのは避けていただきたいものだ。
それ故に、野党が現政権の揚げ足取りに興じるのは、実は自分らの足元を掘り崩す行為だということを自覚してもらいたいのだ。さもなくば自治体下克上はますます増長するどころか、国政が立ち行かなくなるのは自明だと憂慮する。